健康診断のメンタルヘルスチェックで嘘ついた話

これは私が大学在学中の話。

私が通っていた大学では毎年4月に健康診断があり、その際メンタルヘルスチェックとしてアンケートに答えることになっていた。

このメンタルヘルスチェックでは、「気分の落ち込みはあるか?」などといった質問が50問ほどあり、5段階の指標で答える。

このアンケートの結果、精神的に不調のみられる学生は学生相談室に呼び出され心理カウンセラーの面談を受けることになっていた。

私は大学3年生のとき、このメンタルヘルスチェックにひっかかり学生相談室に行くことになった。

その少し前くらいから、なんとなく気分が落ち込んでいて、なぜか涙が出てきたり、ぼんやりと死ぬことを考えたりしていたので、アンケートには気分が落ち込んでいて、死にたい気持ちがあることを正直に書いたのだ。

そうしたら、学生相談室に呼ばれた。

でもそのときは精神疾患なんて他人事だと思っていたし、子供のころからぼんやりと死について考えたりしていたから、別に大したことないと感じていた。

だから、心理カウンセラーさんとの面談でも、心配はされたけど大丈夫だろうということで1度の面談で終了した。

それから何か月か経ったころ、ある授業で教鞭をとっていた教授がこんな話をした。

「一つ上の学年で健康診断のメンタルヘルスチェックに引っ掛かり、実習中なのに学生相談室に呼び出されたやつがいた。そんなところに呼び出される奴は迷惑だ」と。

私の通う学部は医療系で科目に病院実習があった。

一つ上の先輩はその病院実習の期間に学生相談室からの呼び出しがあったらしい。

たしかに病院実習は学外の病院で行われるので、その実習中に呼び出されたのなら実習の予定に支障が出たり、実習中の病院にも迷惑がかかるかもしれない。

そのせいで教授の仕事も増えたのかもしれない。

でも、その先輩は精神的な不調がみられたから呼び出されたわけで、その先輩が悪いことをしたわけではない。

けれど、教授はあたかもその先輩が悪いといった口調でこの話をしていた。

「あ、学生相談室に呼び出されることはいけないことなんだ」

その話を聞いた私はそう思ってしまった。

そしてそれは心に刻み込まれた。

時間は流れ、私は大学4年生になり、健康診断を受ける季節が来た。

その頃の私は1年前に比べ精神的な不調はさらに増していた。

毎日涙は出てくるし、自傷行為はやめられないし、どうやったら死ねるか綿密に考える日々。

今振り返ると、相当追い込まれていた。

そんな状態での健康診断。

今年もメンタルヘルスチェックのアンケートはある。

自分は精神疾患かもしれないとは思ってはいなかったけど、たぶん正常ではないと感じてはいた。

正直に答えたら確実に学生相談室に呼び出される。

今年は病院実習がある。

思い出される教授の言葉。

「学生相談室に呼び出される奴は迷惑」

ダメだ、正直に答えちゃいけない。

どうしよう。

なんて答えればいいかわからない。

精神的な不調のない人はこのアンケートにどうこたえるんだろう。

どうしようか悩んでいたら、ちょうど隣で友人がそのアンケートに答えているのが目に入った。

この子の真似して書いたらいいのでは!

そう思いついた私は横目でその子のアンケートを盗み見て、まるっきり同じ回答をしてアンケートを提出した。

結果,

その年、学生相談室に呼び出されることはなかった。

よかった。

のは、ここまで。

精神的な不調を隠し、誰にも気づかれず病院実習に挑んだ私はどうなったか。

私はパワハラで有名な病院を実習先に指定され、案の定パワハラまがいのことを受け、実習を途中リタイヤ。

大学を1年留年。

なんとか1年の留年で卒業し、新卒で就職。

しかし、就職して3か月後に自殺未遂で救急搬送。

気づいたら集中治療室でいろんな線に繋がれていた。

精神科の閉鎖病棟に入院。

職場はそれがきっかけで退職。

その後2年半の無職生活。

自殺未遂を何度も行い、精神科への入退院を繰り返す。

現在27歳。

やっとおちついた生活を送れるようにはなってきたが、いまだ正社員では働けていないし、年相応のライフイベントは何もない。

あのとき、アンケートに正直に答えて、誰かに相談していたら人生違っていたのかもしれない。

違う未来があったかもしれない。

もう遅いけど。

不調に陥ることは誰にでもあるし、それはけっして悪い事ではない。

だから、こんな風に不調を隠して追い込まれる人がいなくなってほしい。

このブログを読んでいる人には、精神的な不調が悪いものとはとらえずちゃんと誰かに相談してほしいし、助けを求めてほしい。

ひとりで抱え込まないで。

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